『体が若くなる技術 ミトコンドリアを増やして健康になる』 太田成男 著 サンマーク出版 その3
ストレスを感じた時や、激しい運動を行った際などに発生し、細胞を傷つけるために老化の原因になると言われる「
活性酸素」はどのようにして生じるのでしょうか?
本書『
体が若くなる技術』の著者である太田成男氏によれば、「活性酸素を生み出してしまう根っこの原因」とは、実は
ミトコンドリアが人間の体のいたるところで使用するATPというエネルギーを放出する物質を合成する際に、「
電気エネルギーを使っているということ」なのだそうです。
「ミトコンドリアが効率よくATPを合成できるのは、食物をいったん電気エネルギーに変えて使っているから」であり、「極端な言い方をすると、
食べ物は「電気の素」」なのだと言います。そして、「ミトコンドリアには、電子が流れ、巨大な電圧がかかる」のであり、活性酸素とは「電子と酸素が結びついた物質のこと」なのだとしています。
その活性酸素と呼ばれる物質は、三回変身するのだと言います。酸素が電子を吸収する毎に、「スーパーオキシドラジカル」、「過酸化水素」、そして格段に酸化力が強いとされる「ヒドロキシルラジカル」と、だんだん過激な活性酸素になっていくのだそうです。
この活性酸素は、ミトコンドリアがエネルギーを生み出す際に、一緒に発生してしまいます。このことに関して太田氏は「
体が若くなる技術」のなかで次のように述べています。
「ミトコンドリアでは、「電子」と「食事」を利用してATPという物質を合成します。その際、電子はミトコンドリアを包む膜の上を流れていくのですが、
その膜の上は平均台のように細く、ときどき電子がこぼれ落ちてしまうのです。
加えてミトコンドリアには、とてつもない電圧がかかるので、電圧が一瞬でも高くなったときには、どうしても電子がこぼれ落ちてしまいます。(中略)
このこぼれ落ちた電子が、近くにある酸素と結びついてしまったものが、乱暴者の活性酸素なのです。」(p107)
また、「エネルギーを作る際に順当にプロセスが進めば、電子はこぼれないはず」だとしていますが、わたしたちの体はそれほど完璧に作られているわけではないため、電子がどうしてもこぼれ落ちてしまうそうなのです。さらに、太田氏は「
呼吸で取り込んだ酸素の一〜二%が活性酸素になっていると言われています。そして、ミトコンドリアの質の低下や、ストレスや早食い、急激な運動の開始や停止などによって過度な負担がかかると、もっと多くの活性酸素ができてしまう」のだと述べています。
その反対に「できるだけ電子がこぼれ落ちないようにすれば、それだけ活性酸素の発生を防ぐことができる」と言います。また、「電子がこぼれてしまうのは、急激に電子が流れたときと、電圧が高くなりすぎたとき」であるため、「電子の動きを抑えてやればいいということになり」、さらに、「電子は、栄養素(食物)からエネルギーをつくり出すときに動くものなので、エネルギーの生産を少し低下させてでも、電子のスピードを遅くすればいいということに」なるとしています。
ここで述べられている「エネルギー生産を少し犠牲にしても、電子がこぼれないように電圧を下げている状態」のことを、「マイルド・カップリング」というそうです。「
そしてこのマイルド・カップリングの状態をつくり出すためには、ミトコンドリアの「量」が必要」なのだと言います(ミトコンドリアの量の増やし方については、
こちらの記事を参照してください)。
その理由については、「ミトコンドリアの量がたくさんあれば、大量のエネルギーが必要になっても、ひとつのミトコンドリアにかかる負荷は小さく」なるからだと太田氏は述べています。
もし一〇〇個のATPが必要になった時、ミトコンドリアがひとつしかなければ、そのミトコンドリアがフル稼働して急いで作らなければならず、しかもその際に電子がこぼれ落ちる頻度も高くなり、その結果、活性酸素が大量にできてしまうといいます。しかし、ミトコンドリアの量が増えれば増えるほど、ATPを作る際のひとつあたりの負担が減るため、「電子の流れは安定し、マイルド・カップリングが実現する」のです。